前回の記事「絶対的なものⅠ」で、絶対的なものの特徴を書きました。
特徴①:絶対的なものとは、誰にも何にもコントロールすることができないし、侵したり奪ったりすることができないもの。
そして記事の最後で、絶対的なことは3つあると書きました。今日は、まず一つ目を紹介したいと思います。
それは、「他者(他人)」のことです。
他者は、私がその人と関わろうとする時、私にとって絶対的な存在となります。
これはどういうことでしょうか?
他者の感情をわたしはコントロールすることはできません。侵すことも奪うこともできないのです。
わかりやすい例は恋愛感情。
どんなにこちらが好きでも、相手が自分をなんとも思っていないことを、私たちはどうすることもできません。
戦略をもって、いわゆる「おとす」ということを狙う人もいるかもしれませんが、後のことは後の時の話です。
その時、その場での相手からの拒否は、まぎれもなくその時の私にとっては、コントロール不可能で、その気持ちは侵すことも奪うこともできない絶対的なものなのです。
他者の考え方や行動も同じように、その時、その場では、絶対的なものでしょう。
それを下手に変えようとしようものなら、猛反発を受けます。
他者を受け入れるとは
だからカウンセリングの場では、まずは無条件の尊重・受容が求められるのです。
カウンセリングは、ある意味、その人の感情・気持ちや、考え方、行動などに変化を起こすことを目的としています。
しかしそれができるのは、カウンセラーとクライエントで関係(信頼関係)ができた後です。
まずは、他者(クライエント)の無条件の(絶対的)受容が関係を築くための第一条件となります。
「絶対的なもの」と聞いて、身構えてしまった方もいたかもしれませんが、その絶対的のものとは、あなたのそばにいる隣人のことだったのです。
ここで前回の記事でお話ししたもう一つの絶対的なものの特徴をあげます。
特徴②:絶対的なものは、「仕方ないものとして受け入れるしかない」ということです。
そのつどの「今、ここで」の関係においては、他者と関わろうとおもったら、他者は受け入れるしかないのです。コントロールもできないし、侵すことも奪うこともできないものだとしたら、相手と関わるために、私たちは相手を受け入れる以外に何ができるでしょう。
他者を受け入れることは、自分を相手に合わせるということです。
他者を受け入れることは、他者の存在が私の判断基準になるということなのです。
勘違いしてはいけないのは、それは他者の言いなりになるということではありません。
相手に合わせることと、他者の命令に無条件に従うこととはまた別の話です。
他者と本当にかかわるとは
もし他者と本来的に関わりを持とうとするとき、私たちはまず相手の絶対性を認め受け入れることが必要なのです。
「関係」という概念は基本、一致か不一致のことです。したがって相手と本来的に関係するというのは、相手と一致することを意味します。それは相手の絶対性を認め受け入れることで可能となります。
それ以外の(不一致な)関係の仕方は、相手のどこかを否定するか無視する仕方での関係なので、条件付きで、否定的な要素を含むいびつな関係と言えるでしょう。
他者との欠如的で不完全な関係なのであって、やがては、相手を傷つけたり、傷つけられたりする火種になります。
他者の存在は、あなたが関係を持とうとする時、「今、ここ」において、あなたにとって絶対的なものであって、したがって相手のあり様(気持ち・考え方・行動)を基準にしてあなたのあり方を決めるしかないのです。
わたしは、人間関係でどうしたらいいかと思ったときは、相手を変えようとするのではなく、相手を基準にして自分の行動をどうしていくべきかということを考えます。
他者の存在を絶対的なものとして認めることが、実は相手を無条件に受け入れることになるのです。それがつまり他者と関係を持つ・関わるということです。
しかし、常に相手を基準として、自分の気持ちや考えを無視しているとこれまた、何か不調和が起きてきてしまいます。不満がたまってしまうかもしれません。そこで、2つ目の絶対的なものについての基準が必要となってくるのです。それを次回の記事で書いていきたいと思います。
関連コラム記事: